退屈なかもめたち パート1&2

パート1のあらすじ

古ぼけた区民館の一室。ここは劇団かもめ座の稽古場。なかなか芽のでない“女優”日高雪子(紀那きりこ)がやってくる。面接を経て入団するも、古参俳優の晋(白畑真逸)のひと言で劇団は崩壊の危機に。まとめ役のりえ(倉多七与)は新たな仲間を募るが、身勝手な俳優たちの言動に雪子は巻き込まれ翻弄されていく。そして新旧の対立が勃発して…。

パート2のあらすじ

劇団に残った雪子と良重(岩松れい子)は、かもめ座を再生させるため次回公演をチェーホフ作『ワーニャ伯父さん』と決める。キャストが集まり稽古が始まるが、年少のそら(平井友稀奈)の自己主張の強さに雪子は困惑。出戻りメンバーの哲夫(小山鉄平)と智之(司馬正太郎)からのプライベートなアプローチにも悩まされ、雪子は劇団運営の難しさに直面していく…。

イントロダクション

演劇という「虚構」に魅せられ、役にのめり込んでいく俳優たち。彼らはその一方で他者との人間関係という「現実」に直面し苦悩する。彼らの「虚構と現実の境界」は、ときに曖昧に融合してしまう。
オリジナル脚本と監督は、デジタルリマスター版が公開され話題となった『トキワ荘の青春』(市川準監督)の共同脚本を務めた鈴木秀幸。編集は予告篇ディレクターとして活躍する松田朋子(トミーノーシス)。グレーディングとオンライン編集はCM・TV畑で活躍する岡部俊明(アールスタジオ)。サウンドデザインは市川準作品を支えつづけた橋本泰夫。整音は『ドライブ・マイ・カー』のリレコーディングミキサーを務めた野村みき。
「仲間のいる場所」と「人の温もり」が、生きる実感をさがして空回りしてしまう私たちの背中を、少しだけ前に押しくれる。力を抜いてがんばろうと思えるホンワカムービーが誕生した。

監督の言葉

演劇を学ぶため、劇団の稽古場やワークショップに通っていた時期があります。
俳優が、戯曲の中の「虚構の人物」と向き合っていくとき、彼らは、言葉を発し、身体を動かし、自問し、相手役と交流しながら、すこしづつ何かを見つけていく。やがて「虚構の人物」に血が通っていく。その姿は、繊細で、人間くさく、美しかった。
「稽古場」は、そんな人間探究と創作を共有できる場所として魅力的でした。また、この「なにもない空間」が、制約の多い世の中で、ほっと息をつけるサンクチュアリ(聖域)のようにも思えてきました。
いつしか僕は「稽古場の俳優たちを撮りたい」と思っていました。

キャスト

紀那きりこKiriko Kina

愛知県出身。立教大学文学部卒業。映画『夢幻紳士 人形地獄』(海上ミサコ監督)、『漂流者』(山本政志監督)、舞台『僕らの城』(八木橋努 作・演出) に出演。大学時代の映画サークルを皮切りに、映画、舞台を中心に精力的に活動中。
特技・人物形態模写、趣味・パンダ鑑賞。

小山鉄平Teppei Koyama

1982年生まれ、岡山県出身。拓殖大学卒業。ナレーター/役者/空手師範(ひばりが丘道場長)
CM ・WEBを中心にナレーターとして活動中。

倉多七与Nanayo Kurata

埼玉県深谷市出身。フランスのジャック・ルコック国際演劇学校に学ぶ。
帰国後はアングラ、新劇等の舞台出演多数。近年は映像作品の出演も増加中。福井駅前映画祭2022ノミネート『Phone Booth』主演。
身体が反応する演技を目指している。

司馬正太郎Masataro Shiba

1986年生まれ、茨城県出身。文学座本科卒業。映画マニアの父親の影響で幼少期より数多の映画に親しむ。
俳優活動の一貫としてかわさきエフエムやnote上でもラジオパーソナリティーの実績あり。

白畑真逸Shinichi Sirahata

1965年生まれ、埼玉県出身。映画、テレビ、CMにて幅広く活動中。
「水曜日のダウンタウン」の無表情おじさん。「バイク王」CMの浮いている人。

笹本ゆりYuri Sasamoto

大阪府出身。北海道大学卒業。海外映画祭にて監督・出演作品が受賞中。『Can't Jugde』は、サンディエゴアジアン映画祭 2020ショート上映。監督・主演『BRIGHT PEOPLE』最優秀女優賞。
TV朝日『深層捜査スペシャル』吉丸幸子役や、"ヒトガタの村"声優等、映画、テレビ、多方面にて活躍中。フェイバリットムービーは『雨に唄えば』やチャップリン作品。

岩松れい子Reiko Iwamatsu

群馬県出身。1998年より2年間、舞台演出家デボラ・アン・ディスノー(全米監督・脚本家協会員)に師事。 1999年10月の舞台「暗殺者の夢」でデビュー。その後は舞台を中心にMC、ナレーター、シャンソン歌手、 ラジオパーソナリティー等で活動。
近年は映画俳優としての活動にも精力的に取り組んでいる。

為国孝和Takakazu Tamekuni

1965年生まれ、福井県出身。演劇ユニットLinkProject主宰・演出。自ら学んできたメソード演技、ストレートプレイ、寺山修司、唐十郎を換骨奪胎し、詩情と身体表現の融合を模索中。俳優としても活動している。

佐野優也Yuya Sano

1988年生まれ、山梨県出身。映画、テレビにて幅広く活動してきたが、しばし休息。2022年11月より充電期間に入ります。

野本蓉子Yoko Nomoto

神奈川県出身。大学在学中、SPIRALCHARIOTSの演出家と出会い、舞台「2F」でデビュー。その後、劇団ひまわりに所属しながら、人形劇団ひとみ座の全国巡業を経験。海外で演技を学んだ恩師と出会い、いつか海外で日本人役を演じたいと思い、日本舞踊や殺陣を始める。
現在、ロサンゼルスの演劇学校にて改めて演技を学んでいる。

平井友稀奈Yukina Hirai

栃木県出身。俳優を志しリアリズム演技を学ぶ。小劇場の舞台を中心にマイペースで活動中。
韓国映画の深い人物描写に魅せられ韓国語を勉強中。

高山陽平Youhei Takayama

1989年生まれ、熊本県出身。文学座附属演劇研究所卒業。シェイクスピアから時代劇まで演劇愛に生きる。元高校球児。

仲田育史Naruhito Nakada

1975年生まれ、沖縄県出身。映画『勝手にふるえてろ』フレディ課長。映画、テレビドラマ、舞台、酒場と幅広く活動中。

作品コメント

犬童一心(映画監督)

『退屈なかもめたち』は演劇を愛し過ぎ、日々翻弄される俳優たちの物語。
名作『トキワ荘の青春』の脚本家鈴木秀幸、待望の監督作、必見の面白さ、至福の120分。
「人」を見つめることの幸福と苦行が充満。
俳優の皆さん、素晴らしいです。
俳優を目指す方、『トキワ荘の青春』ファン、インディーズ映画を作りたい方、見てね。

中村夏葉(撮影監督)

登場人物の表情、在り方を見続けていると、滑稽で、切なく、愛おしくなって、中毒性を帯びてくるから不思議・・・。
各々の技とか欲とか高慢さとか諦めとか受動性とか滑稽さとか、ジワジワ膿のように出て来て、愛着の持てる人々に感じられて、愛でるように観てしまいました。
画も演出も静かで、丁寧で、やさしく、美しく、観終って何日もじんわり残る作品で、素敵でした。

木村奈緒(フリーランス)

役の手前に、演者それぞれの人生がある様子を見て、
あらためて「この世は舞台、人はみな役者」であると思いました。
演劇であり、映画であり、俳優が俳優を演じるという、二重写し/入れ子構造のような仕組みも興味深かったです。
「私たちの日々が演劇ならば、本番はいつなのだろう」と、鑑賞後にじんわりと考える種をもらったように思います。

安達勇貴(映画監督)

俳優が俳優を全うすること。
そして誰かを見つめる、振り返るような彼らの細やかな動きを見逃さないこと。
手持ちカメラの微細な揺れですら、フィルムを映写したときのかすかな画面の振動のように感じられる。
古典的な佇まいの端正で清々しい一本です。

池田良(俳優)

計算されているようで本能的で、
古いようで新しくて、
退屈なようで滑稽で、
作り物の中に垣間見える本当の瞬間に、目を奪われました。

進藤丈広(映画監督)

何故人は演劇に惹かれるのか?
その答えがこの映画に込められていると感じました。
段々と登場人物に引き込まれていく不思議な魅力があり、演劇経験者も未経験者も楽しめる作品。
愛おしい人々が集うかもめ劇団を是非スクリーンで覗いてみて下さい。

八木橋努(劇作家/演出家)

自己主張する、まとまらない人達。
誰がリーダーになるのか、誰をリーダーにするのか、リーダーはいらないのか。
でも同じ方向に向かう中で、それぞれの気づきがある。
現代の多様化する社会で生きていくヒントがあるかも知れない。

藤重道治(TVディレクター/ドキュメンタリー監督)

演劇をする人と観る人とは、まったく違うと思っていた。
でもその垣根はないのかもしれない・・・。
気づくとあなたはもう舞台に立っているかもしれない。
ふしぎな本気がゆっくりと迫ってくる。
コレは油断した方が得をする、遠いようで近い、いや胸の内の驚くほどリアルな物語。

庄司輝秋(CMディレクター/映画監督)

鈴木秀幸監督が脚本で携わった『トキワ荘の青春』にも通底する”場"を巡る話であり、本作もまた、立ち上がっては立ち消える”場"を描いた名作だと思う。
かもめ座という場を見つめる鈴木秀幸監督の目は、温かくも冷徹で、演者と役柄の境目を失っていく感覚も含めて、背筋が凍る瞬間がいくつもある

今尾偲(映像ディレクター/映画監督)

現代の映画とクラシックスとの差は何か?
登場人物たちの迷いを描くか描かないか?
ということだと思う。
現実の世界と照らし合わせてみても、我々は常に迷い彷徨いながら生きている。
この『退屈なかもめたち』という映画は、あまりにも赤裸々に登場人物たちの迷いを描いている。
それは時としてこちらが赤面したくなるほどリアルだが、時代性という意味では正しい映画なのだと思う。

スタッフ

編集: 松田朋子(Tommy Gnosis)
岡部俊明(アールスタジオ)
サウンドデザイン: 橋本泰夫
整音: 野村みき
ピアノ演奏: 紀那きりこ
製作: バブーシュカ
監督・脚本・撮影: 鈴木秀幸

作品概要

『退屈なかもめたち パート1&2』連続ショートドラマ形式
(2022|日本|カラー|120分|16:9|5.1ch)

リンク